研 究 業 績 (2000年度まで)

Research activities until February 2001.

(***分担著書***)

 

著書、学術論文等の名称

単著

共著

発行又は発表の年月

発行所、発表雑誌

又は発表学会等の

名称

 

概      要

(著書)

1.「色」,「彩度」,「CIEの色度図」,「色光」,「比視感度」,「ブライトネス(明るさ)」

共著

1998年11月

速解 光サイエンス辞典(オプトロニクス社)(分担著書)

 光学に関する用語のうち特に色覚に関する専門用語について,1語あたり2000字から5000字を用いて詳細に解説した。

 

2.「色覚(視覚の発達)」

共著

2000年9月

視覚情報処理ハンドブック(日本視覚学会(編),朝倉書店)(分担著書)

 乳幼児の視覚系の発達を特に色覚に焦点を当てて解説し,乳幼児における視覚実験をその手法とともに紹介した。

3.「視覚系生理(視覚の加齢)」

共著 2000年9月

 

視覚情報処理ハンドブック(日本視覚学会(編),朝倉書店)(分担著書)

 高齢者における視覚系にみられる変化を,解剖学的見地及び生理学的見地から解説した。錐体などの網膜上の変化と比べて,高次部分での変化は比較的少なく,また可塑性をある程度まで維持していることを説明し,関連研究を紹介した。

4.「色覚(視覚の加齢)」

共著 2000年9月

 

視覚情報処理ハンドブック(日本視覚学会(編),朝倉書店)(分担著書)

 

「色覚(視覚の加齢)の項では,今度は心理物理学的測定の結果から,神経回路網で受容体の感度低下に対する補償が行われていることが示されているという著者(申請者)らの研究を解説し,また関連する研究や今後の展開などについて議論した。

 

 

(***学術論文***)

 

 

著書、学術論文等の名称

単著

共著

発行又は発表の年月

発行所、発表雑誌

又は発表学会等の

名称

 

概      要

(学術論文)

1.「周辺単色光による空間的黒み誘導」

共著

1992年2月

光学 21巻第2号 pp.102-112.

(研究論文)

 空間的黒み誘導量を周辺単色光の網膜照度の関数として測定した。被験者は中心白色テスト刺激光の見えを黒み、白み、色みの3要素で評価した。実験結果より、黒み量は双曲線正接関数で近似できることが明らかとなった。近似関数を用いた計算および調整法を用いた実験から黒み誘導分光感度を求めたところ、中心光が白色の時には黒み誘導量は視覚系の輝度チャンネル出力の比により決定されるとの結果を得た。

共著者:篠森敬三、中野靖久、内川惠二

2.「空間的黒み誘導における色・輝度チャンネルの寄与に関する研究」

単著

1992年3月

東京工業大学大学院総合理工学研究科博士学位論文

 空間的黒み誘導の分光感度関数を求める心理物理学的実験の結果から、中心白色光の場合は、周辺色光の色は寄与せず、視覚系の輝度神経チャンネルの出力のみで黒み知覚量が決定されることが明らかとなった。一方、中心色光の場合には、中心光の色味が作り出す色神経チャンネル出力が黒み量に影響した。この黒み誘導における色神経チャンネル寄与の非対称性の発見により、過去の矛盾する研究結果を初めて統一的に説明することが可能となった。

3.「周辺白色光によって中心色光に誘導される 黒みの測定」

共著

1992年5月

光学 21巻第5号 pp.303-310.

(研究論文)

 無彩色周辺光によって中心色光上に誘導される黒み量を両眼隔離黒みマッチング法によって測定した。被験者は左眼テスト刺激の黒み量を、右眼参照刺激とマッチングした。中心光が色光である場合の黒み誘導分光感度は、輝度関数ではなく、明るさ関数の傾向を示した。しかし正確には一致せず、明るさメカニズムの直接的な寄与では無いとの結果を得た。また低彩度テスト刺激光を用いた追加実験から、刺激彩度低下により黒み誘導効率が上昇する結果を得た。

共著者:篠森敬三、中野靖久、内川惠二

4.Influence of the illuminance and spectral composition of surround fields on spatially induced blackness.

共著

1994年9月

Journal of the Optical Society of America, A 11 pp.2383-2388.

(研究論文)

 空間的黒み誘導量を周辺単色光の網膜照度の関数として測定した実験の結果に対する解析から、色応答は周辺色光の作り出した散乱光によって生じたことが明らかとなった。計算的に色応答の影響を除去したところ、黒み誘導量はLogistic関数あるいは Weibull 関数によって良好に近似できた。また異なる波長における関数も同一形状を示した。これは周辺光の色が黒み量に影響しないことを示し、調整法による分光感度測定結果とも一致した。この近似式により、中心白色光上に生じる黒み量を全ての周辺光条件において予測することが可能になった。

共著者:Keizo Shinomori, Yasuhisa Nakano and Keiji Uchikawa

5.Contributions of neural pathways to age-related losses in chromatic discrimination.

共著

1995年6月

Journal of the Optical Society of America, A 12 pp.1233-1241.

(研究論文)

 S錐体経路によってのみ色が弁別されうる青混同線上で、色弁別能力の加齢変化について測定した。結果は全体的なS錐体刺激量が小さい条件の下でのみ、高齢者の色弁別能力が低下する傾向がみられ、従来言われている青混同色線上全域での弁別能力の低下はなかった。これは従来の測定が刺激条件制御が不完全な百ヒュ_テストによって行われたためである。デ_タ解析より、高齢者の色弁別能力低下は経路上のノイズ増加あるいはS錐体出力レベルの減少によるものであることを考察した。

共著者:Brook E. Schefrin, Keizo Shinomori, and John S. Werner

6.Spectral mechanisms of spatially-induced blackness: Data and quantitative model.

共著

1997年4月

Journal of the Optical Society of America, A 14 pp.372-387.

(研究論文)

 黒み誘導における色情報の寄与を確かめるため、分光感度測定と加法則テストを行った。単色中心光に白色周辺光を用いたとき、分光感度には3つの極大点が見られ、打ち消し型の加法則不帰となった。一方,白色光中心に単色の周辺光を用いたときには、輝度関数と同様の単一ピーク形状を示し、加法則が成立した。結果より黒み誘導が、中心光においてのみ、反対色4チャンネル経路からの信号の影響を受けることが示された。さらに結果を説明する定量モデルを提案した。

共著者:Keizo Shinomori,Brooke E. Schefrin and John S. Werner

7.S-cone signals to temporal OFF-channels: Asymmetrical connections to postreceptoral chromatic mechanisms.

共著

1999年1月

 

Vision Research, 39,pp.39-49

(研究論文)

 S錐体からの信号入力を受けている時間的 OFF チャンネルの存在について調べるため,S錐体刺激量を時間的に変化させたテスト刺激に対する知覚閾値を,時間的チャンネル選択的順応条件下で測定した。テスト刺激は輝度一定で,S錐体刺激量を急増漸減型鋸波形で変化させたもの,および漸増急減型鋸波形で変化させたものの2種類を用いた。一般的に,急増漸減型鋸波形テスト光は時間的ONチャンネルを,漸増急減型鋸波形テスト光は時間的OFFチャンネルを,選択的に刺激すると考えられる。同様の原理で,鋸波形の輝度・色変化を伴う単色光は時間的チャンネルに選択的な順応効果があると考えられる。もしS錐体が寄与する色チャンネルが時間的に単一(例えばONチャンネルのみ)であれば,鋸波形順応光による選択的順応効果は起こりようがない。したがって選択的な順応効果が生じることは時間的ONおよびOFFチャンネルが分離して存在することを示す。
 実験の結果は,選択的順応効果の発生は被験者ごとの順応光の色の見えに依存した。これは,S錐体信号が寄与する赤色処理メカニズムには時間的ONOFFチャンネルが存在するに対し青色処理メカニズムでは時間的に単一チャンネルしか存在しないことを反映していると考えられる。

共著者:Keizo Shinomori, Lothar Spillmann and John S.Werner

8. Senescent changes in color discrimination and color appearance.

単著

2000年2月

Journal of Light and Visual Environment (Journal of The Illuminating Engineering Institute of Japan: 照明学会英文誌), vol. 24 No.2, pp.40-44

(研究論文)

人間の視覚系においては加齢により,水晶体濃度の増加,瞳孔径の減少や網膜神経節細胞数の減少などが生じる。そのために網膜の受容体に到達する物理的な刺激量は大きく影響を受けるはずである。しかし,人間の色の見えは一生を通じて相当程度安定している。これは錐体感度が種類によらず一定の割合で減少することを反映していることにも依存している。
 
その一方,色弁別能力は,網膜照度の減少だけではなく,神経回路網のS/N比の減少により悪化する。これは錐体からの信号を増幅して神経回路網への入力を一定に保つこととノイズが増加してしまうことのトレードオフであると考えられる。
 
これらの新しい研究結果より,高齢者にとってより安全で,快適な視環境を提供するためのいくつかの方法が考えることが出来る。さらに,それらをどのように照明環境に応用していくかについていくつかの提案を行った。

9.1999年光学会の進展 15. 視覚光学」

単著

2000年4月

光学 vol.29 No.4, pp.218-219.

(解説論文)

 1999年全体に行われた視覚光学の研究状況について,主に学会発表を中心に,それぞれの小分野ごとにまとめた。またそれらを俯瞰し,来年度以降の研究の方向性と課題についても言及した。

10.「照明年報 6.2 視覚心理 (第6章 視覚)」

単著

2000年8月

照明学会誌 vol. 84-8B, pp.598-600

(解説論文)

 照明技術に関与する視覚心理系の研究の現状について,国内外の研究発表や文献をふまえて平易に解説した。
 
特に加齢の影響などの最先端のテーマについては,著者自身の研究もふまえて,現在の状況や問題点も説明し,将来への展望についても言及した。

 

 

(***国際・国内会議 論文集(プロシー ディング)発行***

 

 

著書、学術論文等の名称

単著

共著

発行又は発表の年月

発行所、発表雑誌

又は発表学会等の

名称

 

概      要

(国際・国内会議 論文集(プロシー ディング)発行)

1.Spatial blackness induction at different blackness levels.

 

共著

 

1992年1月

 

Advances in Color

Vision. Vol.4 of OSA 1992 Technical Digest Series (Optical society of America, Washington D.C.) pp.137-139

(国際会議及び査読付きプロシーディング)

 

 異なる周辺単色光により白色中心光上に空間的に誘導される黒み量をカラーネーミング法により評価し、結果から黒み量
100, 50%,5%における黒み誘導分光感度を求めた。また調整法を用いた実験により黒み量50%での黒み誘導分光感度を直接求めた。その結果、中心光が白色の時には黒み誘導量は視覚系の輝度チャンネル出力により決定された。また刺激形状を変化させ、白色周辺光によって中心色光上に誘導される黒みが100%となるときの刺激条件を測定した。このときの黒み分光感度関数は明らかに輝度関数とは異なり、色メカニズムの寄与が示唆された。

共著者:Keizo Shinomori, Yasuhisa Nakano and Keiji Uchikawa

2.Rates of age-related declines of chromatic discriminations are  the same for equiluminant stimuli lying on tritan and constant S-cone axes.

共著

1994年9月

The John Dalton Memorial Conference. (Applied Vision Association)Book Chapter;

"John Dalton's Colour Vision Legacy,"(ed. C.M. Dickinson, I.J. Murray and D. Carden, Taylor &Francis, London) pp.287-297,1996.

(国際会議及び査読付きブックチャプター)

 S錐体混同色線上とL/M錐体混同色線上で色変化する刺激を用い、各年齢層における色弁別能力を測定した。視覚系光学部分での加齢による光透過率の減少を補正してもなお、両刺激条件の場合とも色弁別能力の低下がみられた。この結果と以前の研究における加齢による増分閾値減少の結果から、網膜上の錐体出力及びそれ以降の神経経路の出力において、加齢による出力減少が生じていることがわかった。

共著者:Keizo Shinomori, Brooke E. Schefrin and John S.Werner

 

3.Individual variation in wavelength discrimination: task and model analysis.

共著

1997年5月

AIC Color 97 Kyoto (The 8th Congress of the international colour association). Proceedings of The 8th Congress of the international colour association, I, (The Color Science Association of Japan, Kyoto), pp. 195-198, 1997.

 

(国際会議及びプロシーディング)

 筆者らの過去の研究から,加齢による水晶体の濃度増加等による網膜上の刺激強度変化を調整した場合でも,年齢とともに色弁別能力が低下することが明らかとなった。そこで,色の弁別能力を測定する実験の一つとしてよく知られている波長弁別実験をおこなって,加齢による弁別能力の変化を測定した。HFP測定により被験者毎に,刺激の網膜照度を一定にした。従って,刺激の明るさは刺激の色(波長)によって異なる。実験結果は,平均31歳の被験者に対して,平均73歳の被験者は,測定した波長平均で約3nmの波長弁別閾値の上昇を示した。しかし,その上昇は一律ではなく,刺激の波長によって異なる。波長弁別感度低下の要因を探るため,実験データを筆者らが過去に提案した色覚モデルを用いて解析した。その結果,色情報処理の経路において出力信号が加齢とともに減少し,同時にノイズが増加していることが示された。

共著者: Keizo Shinomori and John S. Werner

4.「高齢化と色の見え加齢による色覚の 変化〜」

単著

1997年11月

カラーフォーラム JAPAN '97 カラーフォーラム JAPAN '97論文集 (光学4学会(照明学会,日本色彩学会,日本写真学会,日本光学会)東京) pp. 89-96, 1997.

(招待講演及びプロシーディング)

 加齢による水晶体濃度の増加や老人性縮瞳は,単に網膜照度を減少させるだけではなく,刺激光の分光分布をも変化させる。また生理学的変化によって錐体の形状が変化し,光受容の感度が低下するとともに,神経細胞の減少も生じる。しかし,一般的な視環境のもとでは,人間の視覚系は,生涯を通じて相当程度まで色の恒常性を維持する。この事実は,網膜上での錐体感度の低下を視細胞以降の神経経路で信号を補償していることを示している。その補償量は,刺激条件や強度に依存し,異なる種類の錐体間での感度のバランスを保つ働きがある。一方,波長弁別実験や色弁別実験の結果は,神経経路においてノイズの増加や感度低下が生じていることを示し,加齢に対する補償が完全ではないことが明らかとなった。

5Color discrimination and appearance of the elderly 単著

19996

24th session of the CIE (CIE division 1) (Warsaw,Poland) [In proceeding of 24th session of theCIE vol.2, p42, 1999]

(招待講演及びプロシーディング)

 人間の視覚系においては加齢により,水晶体濃度の増加,瞳孔径の減少や網膜神経節細胞数の減少などが生じる。よって網膜の受容体に到達する物理的な刺激量は大きく影響を受けるはずであるが,色の見えは一生を通じて安定している。これは錐体感度が種類によらず一定の割合で減少することを反映している。その一方,色弁別能力は,網膜照度の減少だけではなく,神経回路網のS/N比の減少により悪化する。これは錐体からの信号を増幅して神経回路網への入力を一定に保つこととのトレードオフと考えられる。これらの研究結果より,高齢者にとってより安全で,快適な視環境を提供するためのいくつかの方法を提案した。

 

(***国際会議*** )

 

 

著書、学術論文等の名称

単著

共著

発行又は発表の年月

発行所、発表雑誌

又は発表学会等の

名称

 

概      要

(国際会議)

1. Chromatic processes contribute tospatially-inducedblackness.

 

共著

 

1993年5月

 

1993 Annual  meeting of ARVO (Association for Reseach inVision andOphthalmology)
Investigative Ophthalmology & Visual Science Vol.34 No.4 (supplyment), p747,1993.]

(国際会議)

 

黒み誘導に対する色の寄与が刺激条件に依存することを明確にするために、同じ被験者、同じ実験手順を用いて黒み誘導分光感度関数を測定した。その結果色チャンネルの寄与は中心光の色のみによって生じ、周辺光の色からは生じないことが確認された。また恒常法と調整法の両方を用いたコントロール実験によって、実験手法の差は結果に影響を与えないことが明らかとなった。

共著者:Keizo Shinomori, Brooke E. Schefrin and John S. Werner

2.Additivity failures

of spatially-induced blackness for chromatic test centers.

共著

1993年10月

OSA Annual meeting. (Optical Society of America)

(国際会議)

 色光上に誘導される黒み量に対する、テスト刺激光の色の影響を確認するために、黒み誘導現象において中心色光の強度加法則が成立するか否かを調べた。結果として、同一色メカニズム内に属する波長間においてのみ加法則が成立し、異なる色メカニズム領域に属する波長光同士では加法則が成立しなかった。この結果より、視覚系の黒み誘導出力機構において、反対色性の色メカニズムが寄与していることが明確となった。

共著者:Keizo Shinomori, Brooke E. Schefrin and John S.Werner

3. Influence of chromatic

processes to spatially-induced blackness.

共著

1994年8月

1994 International Forum of Color (Vision Society of Japan)

Vision (Jarnal of Vision Society of Japan),Vol.6, No.3,p126,1994]

(国際会議)

 過去に著者らが行った実験結果を統一的に説明できる黒み誘導メカニズムモデルの構築を試みた。過去の研究で提唱された一般的な色覚出力モデルのいくつかを黒み誘導の実験結果に適用したが、特に刺激低彩度領域で、定量的に不良な近似結果となった。そこで改良反対色チャンネルモデルを構築した。そのモデルにより、黒み誘導分光感度関数のみから得られた係数群から、低彩度光に生じる黒み誘導効果の加法則不帰をも、定量的に良好に予測することができた。

共著者:Keizo Shinomori, Brooke E. Schefrin and John S.Werner

4.Neuroral components contribute to age-related losses of chromatic discriminations forequiluminant lightslying on tritan and constant S-cone axes. 共著 1994年10月

OSA Annual meeting.(Optical Society of America)

(国際会議)

加齢による色弁別能力の低下を、S錐体混同色線上と中波長スペクトルのS錐体等出力線上において色変化する刺激を用いて調べた。水晶体、角膜及び黄斑色素の加齢による光透過率の減少を光強度補正によって考慮した場合でも、S錐体出力が低レベルにある刺激条件では色弁別能力の低下が生じた。よって網膜上のS錐体出力及びそれ以降の神経経路の出力に、加齢による出力減少が発生したと考えられる。

共著者:Brooke E.Schefrin, Keizo Shinomori and John S.Werner

5. Possible roles of light in modulatingsenescence of human color mechanisms 共著 1994年11月

GSA Annual meeting. (Gerontological Society of America)

(国際会議)

 錐体及び錐体以降の神経経路において加齢による感度低下が生じるが、感度低下の大部分は錐体が補捉する光量子量が減少することにより説明される。人工眼内レンズを装着した患者に対する観察結果より、高レベル紫外線照射によるS錐体の感度低下が有為な差で認められ、光照射が錐体の加齢を促進するとの仮説が支持された。これに対し、視覚系における神経機構は、周囲の環境光を標準光としながら順応的変化し、加齢における色恒常性を維持することが示された。

共著者:John S.Werner, James M.Kraft, Brooke E.Schefrin and Keizo Shinomori

6. Spatial induction of blackness :Experimental data and quantitative model 共著 1995年8月

European Conference on Visual Perception '95

Perception,  Vol.24 (Supplement),  p24,1995]

(国際会議)

 黒み誘導メカニズムを統一的に説明できる定量モデルを提唱した。まず最初に一般的な色覚出力モデルあるいは近年提唱された生理学的知見に基づく白黒出力モデルを黒み誘導の実験結果に適用したが、定量的に不良な近似結果となった。そこで筆者らの提唱する改良反対色チャンネルモデルを用いて実験結果の予測を試みたところ、単色光での実験結果からのみ算出された係数群から、低彩度光に生じる黒み誘導効果の加法則不帰をも、定量的に良好に予測することが可能であった。

共著者:John .Werner, Keizo Shinomori and Brooke E.Schefrin

7.Wavelength and chromatic discrimination in young and old observers. 単著 1996年2月

Symposium on Colour Vision (Scientific Organization :Freie Universitaet Berlin, Universitae tPotsdam and Einstein Forum Potsdam)

(国際会議)

色弁別能力の加齢による変化を調べるため、波長と色の弁別実験を行った。実験刺激において、水晶体、角膜および黄斑色素の加齢による光透過率の減少を補償することにより、神経回路網における加齢効果を測定した。波長弁別実験において、S錐体による弁別機構とLMSの3錐体による弁別機構の2つが見いだされたが、加齢効果は異なっていた。色弁別実験においてはどちらの機構においても加齢効果は、神経回路網における錐体出力の低下と弁別機構のノイズ増加という形で現れた。
8.Wavelength discrimination inyoung and old observers. 共著 1996年3月

Joint Congressof the Swissand German Physiological Societies [Pfluegers Archiv Europian Journal of Physiology, Vol.431,No.6 (Supplement), R57 ,1996.]

(国際会議)

 異なる年齢の被験者における波長弁別能力を、眼光学媒体の加齢による変化を補償した等輝度条件で測定した。S錐体による波長弁別では、加齢効果は全刺激強度における感度の低下として現れた。一方LMSの3錐体による波長弁別では、加齢効果は、弁別機構のノイズ増加という形で現れ、感度の低下は機構の出力値が比較的小さいときのみ観察された。

共著者:Keizo Shinomori,  Brooke E. Schefrin, and John S.Werner

 

9.Psychophysical tests of S-conecontributions to OFF channels 共著 1996年3月

Joint Congressof the Swissand German Physiological Societies [Pfluegers Archiv Europian Journal of Physiology, Vol.431,No.6 (Supplement) ,R14 ,1996.]

(国際会議)

視覚におけるオン反応型チャンネルとオフ反応型チャンネルに対するS錐体の寄与を調べるために、増分閾値と減分閾値を測定し た。輝度のS錐体混同色線上で、色が時間的に鋸型波形で変化するフリッカーを用い、オン・オフチャンネルを選択的に順応した。輝度変化刺激による順応の場合と異なり、順応による増分閾値と減分閾値の上昇に統計的に有為な差が見られなかったことから、本実験条件での両チャンネルの分離は不十分であった。実験方法の改善が今後の課題である。

共著者:John S.Werner, Keizo Shinomori, and Lothar Spillmann

10.Do S-cones contribute to OFF channels? Psychophysical tests of an unsolved physiological problem. 共著 1996年9月

European Conferenceon Visual Perception '96  [Perception,Vol. 25 (Supplement) , p107,1996.]

(国際会議) 

 電気生理学的研究から,霊長類の視覚系においてはS錐体による時間的OFFチャンネルへの信号伝搬はまれだといわれてきた。そこで鋸歯型順応刺激光を用いて時間的ONOFFのどちらか一方のチャンネルを強く順応 し,その時の両チャンネルの感度の変化を鋸歯型テスト光を用いて測定した。実験結果は,S錐体に接続する色チャンネルの場合においては,順応条件による閾値変化の差は微少であった。仮説の検証には不十分である。今後は,より強い順応光を用いる必要があるといえる。

共著者 Keizo Shinomori, John S. Werner, and Lothar Spillmann

11.OFF responses from S-cones: Temporal Signals vary with Post-receptoral Mechanisms. 共著 1997年5月

1997 Annual Meeting of ARVO (Association for Research in Vision and Ophthalmology)          [Investigative Ophthalmology & Visual Science,Vol. 38 No.4 (Supplement),S891, 1997.]

(国際会議)

 S錐体から時間的OFFチャンネルへの信号出力の有無について調べるために,引き続いて実験を行った。今回は,キセノンランプを光源とする光学系により単色光を生成しそれを時間的鋸波としたONおよびOFF順応刺激を用いて,ONあるいはOFFチャンネルのどちらか一方に対してより強い順応を行った。その結果一部の被験者においては,S錐体から時間的ONOFFの両方のチャンネルへ出力が出ている結果となり,順応光の強度が十分であることを示した。しかし,別の被験者の結果では,減分よりも増分に対してより感度を持つ単一チャンネルに出力が出ていることを示唆した。被験者間の差を説明するための仮説及び検証実験が今後の課題である。

共著者: Keizo Shinomori, Lothar Spillmann and John S.Werner

12Age-related changes in wavelength discrimination (429-620 nm) 共著

19988

European Conference on Visual Perception ’98 (Oxford, UK)

[Perception, Vol.27 (Supplement), p202, 1998.]

(国際会議)  

 異なる年齢の被験者における波長弁別能力を、眼光学媒体の加齢による変化を補償した等輝度条件で測定した。今までの研究と同様にS錐体による波長弁別では、ノイズ増加によって結果を説明することが可能である。またLMSの3錐体による波長弁別でも,同様に,加齢効果は弁別機構のノイズ増加という形で現れ、感度の低下は機構の出力値が比較的小さいときのみ生じた。

共著者: Keizo Shinomori, Brooke E. Schefrin, and John S.Werner

 

(***国内会議・講演など*** )

 

 

著書、学術論文等の名称

単著

共著

発行又は発表の年月

発行所、発表雑誌

又は発表学会等の

名称

 

概      要

1.「時間差2点刺激法による視覚受容野特性の測定」

単著

1988年7月

1988年夏期

視覚研究会

(口頭発表)

 ある視覚刺激が、他の刺激の知覚を減少させる抑制現象は、2つの刺激の空間的並置および短時間差継時呈示の場合に観察されるが、これは個々の刺激の作り出す神経応答が神経経路内で互いに打ち消し合うことによって生じる。時間差と空間的距離を同時に有する2刺激間の抑制現象について調べた結果、ある一定の空間的距離に呈示される刺激間の抑制は、ある特定の刺激呈示時間差の時のみ発生し、抑制信号が時間と共に刺激周辺部に伝搬する可能性が示された

2.「時空間的2刺激法 による抑制効果の測定」

共著

1988年10月

第49回応用物理学会学術講演会

(口頭発表)

 空間的時間的な距離を持つ2刺激間に生じる抑制現象から、抑制信号の時空間次元上での伝播現象について調べた。刺激間距離の変化により、抑制が生じる刺激時間差が変化することから抑制信号は刺激位置から周辺部に時間と共に拡散していると考えられる。さらに抑制信号には、刺激呈示直後に刺激呈示地点に発生するものだけではなく刺激周辺部に同時的に発生するものや、刺激呈示後60msec程度後に生じるもの等が存在することが示唆された。

共著者:篠森敬三、内川惠二、    阿山みよし、池田光男

3.「周辺光による黒み誘導量の測定」

共著

1991年1月

1991年冬期

視覚研究会

(口頭発表)

 高輝度周辺光によって白色中心光上に誘導される黒み量に対する周辺光強度の影響について調べるため、周辺白色光の網膜照度を変化させたときの黒み誘導量を測定した。その結果、被験者に知覚される黒み誘導量は、周辺光網膜照度の対数値を変数とする心理量関数で良好に近似でき、黒み量は周辺光強度変化に対して連続的に変化することが示された。

共著者:篠森敬三、内川惠二

4.「周辺光による黒み誘導」

共著

1991年3月

第38回応用物理学会関係連合講演会

(口頭発表)

 周辺光が白色ではなく色光になった場合に、周辺光の色が黒み誘導量に及ぼす影響について実験を行った。周辺光に単波長光を用い、周辺光網膜照度を変数とする黒み誘導量関数に与える影響を測定した。中心テスト光に色知覚が生じたため、黒み誘導量は波長によって影響を受ける結果となった。周辺色光の影響の定性的説明が今後の課題である。

共著者:篠森敬三、内川惠二

5.「周辺刺激光によって生じる黒み誘導量の測定」

共著

1991年4月

平成3年度照明学会全国大会

(口頭発表)

[平成3年度照明学会創立75周年記念全国大会 講演論文集 p141,1991.]

 周辺光強度と黒み誘導量との関係及び黒み誘導量に対する周辺光波長の影響を調べた。異なる周辺単色光により白色中心光上に誘導される黒み量を、カラーネーミング法により評価し、周辺光網膜照度を変数とする黒み誘導量関数を近似的に導出した。その関数から黒み量が50%となるときの黒み誘導分光感度を計算によって求めた。その結果、一人の被爆者においては周辺光の波長の影響がみられなかったが、他の二人の被験者については長波長側で黒み誘導効率が上昇するとの結果を得た。

共著者:篠森敬三、内川惠二

6.「空間的な黒みの誘導効果」

共著

1991年5月

第22回日本色彩学会全国大会

(口頭発表)

 周辺光に色光、中心光に白色光を用いる刺激条件で、カラーネーミング実験から求めた黒み誘導量近似関数から導出された黒み誘導分光感度関数の形状は、被験者によってまた黒みレベルによって大きく異なり、定性的に説明するのが不可能であった。元データの標準偏差から分光感度関数の信頼区間を導出したところ、誤差が大きく、分光感度の波長依存性については明確ではないことが明らかとなった。そこで調整法によって直接黒み分光感度を求めたところ、中心光が白色の時には黒み誘導量は視覚系の輝度チャンネル出力で決まることが示唆された。

共著者:篠森敬三、中野靖久、内川惠二

7.「色光に生じる空間的黒み誘導」

共著

1992年3月

第39回応用物理学会関係連合講演会

(口頭発表)

 周辺光によって中心色光上に誘導される黒み量を、知覚される黒みが色みと共存する条件でも正確に測定するために、両眼隔離黒みマッチング法を開発した。この方法により黒み量が50%となるときの黒み誘導分光感度を測定した結果が、黒み100%の時と同様、分光感度の刺激波長依存性は、従来言われていたような黒み量レベルに依存するのではなく、中心刺激が無彩色か有彩色かに依存することが示された。

共著者:篠森敬三、中野靖久、内川惠二

8.「加齢による色弁別能の変化」

単著

1997年7月

日本視覚学会1997年 夏期研究会

(ポスター発表)

        

[Vision (Journal of Vision Society of Japan),Vol.9, No.3, p199,1997]

加齢によって人間の色弁別能力は低下す る.従来の研究では,水晶体などの眼光学媒体濃度の増加及び瞳孔径の減少によって生じる網膜内での光強度の減少によって,色弁別能力の低下を説明できると言われてきた.しかしそれらの実験は自然視条件で行われており,網膜内での光強度の減少による影響と,網膜及び網膜以降の神経経路の変化の影響との分離は困難である.本研究ではマックスウェル視光学系とHFP測定を利用することにより,被験者ごとに網膜照度を一定にし,波長弁別能力の測定,及びS錐体混同色線上の刺激を用いた色弁別能力の測定を行った.その結果,被験者ごとに網膜照度を一定にした場合でも,加齢による色(波長)弁別能力の低下が観察され,網膜及び網膜以降の神経経路の加齢による変化が,色弁別能力の低下に寄与していることが明らかとなった。さらに改良型Boynton-Kambeモデルを利用した解析により,これらは経路の感度低下及びノイズ上昇によって説明可能であることが示された。
9.「形状知覚の明るさや 色知覚に対する影響」

単著

1997年8月

電気学会・パターン認識の適用環境の拡大共同研究委員会・中国四国地区第1回研究会

(招待講演)

画像処理などコンピュータアルゴリズムを利用したパターン認識手法が発展し,その技術を実際の生産現場などに応用する動きが出てきている。しかし,物理的な情報を取得する場合とは異なり,感覚的な情報を取得する場合には人間の知覚情報処理メカニズムを考慮しないと,人工的なパターン認識手法による評価と人間の判断とが一致しない場合が生じる。そこで,人間の視覚系に焦点を当てて,物体形状に対する形状知覚が,物体の明るさや色に対してどのような影響をあたえるかについて,錯視現象をもとに解説した。

10.「インターネット教育の諸問題について」

共著

1997年8月

平成9年度通信ネットワーク講座(インターネット応用)

(高知県教育

センター,高知)

(招待講演)

 インターネット教育の推進につれて,中学や高校などの教育機関におけるインターネットの導入や運用が進んでいる。そこでインターネット教育における各種問題について解説した。前半はインターネットの導入や運用に当たって,特に教員自らが担当する場合に生じる問題点について,過去の事例を取り上げながら解決法を示した。また後半は教育的側面に焦点を当てて,インターネット等のネットワーク使用による心理学的な影響の事例について取り上げ,インターネット使用における留意点を示した。

共著者:篠森敬三 菊池豊

11.「新生大学におけるコンピュータリテラシー教育の設計」

共著

1997年10月

平成9年度情報処理教育研究集会(室蘭,北海道) 

[平成9年度情報処理教育研究集会講演論文集 pp.55-58,1997]

(口頭発表)

 

 高知工科大学は平成9年度に開学した工科系単科大学である。第1学年では年間を通じたコンピュータリテラシー教育を行う。開学準備段階では、開学後の状況が確定していない要素が多かったにも関わらず、円滑に授業を行えるカリキュラムとシステムを設計する必要があった。本稿では、高知工科大学におけるコンピュータリテラシー教育の設計と、初年度前期までの活動を通した現状の報告とを行った。

共著者: 菊池豊、篠森敬三、岩田誠,福本昌弘、馬場健一

12.「S錐体が関与する時間OFFチャンネルの存在」

共著

1998年1月

日本視覚学会1998年冬季大会   

[Vision (The Journal of Vision Society of Japan), Vol.10,No.1, p51, 1998.]

(口頭発表)

S錐体から時間的OFFチャンネルへの寄与を,S錐体刺激量を時間的に変化させたテスト刺激に対する知覚閾値の順応条件による上昇量を用いて調べた。実験の結果は,選択的順応効果の発生は被験者により異なる結果となった。そこで,被験者ごとの順応光の色の見えをカラーネーミング法で測定したところ,結果の差は,順応刺激の色の見えに依存していることが明らかとなった。そこで追加実験を行ったところ,順応光の色の見えを被験者間で位置させた場合には同じ閾値上昇傾向が見られた。これは順応効果が,錐体感度ではなく,色の見えに依存することおよびS錐体信号は赤色処理メカニズムでは時間的 ONOFFチャンネルの両チャンネルに寄与しているが,青色処理メカニズムでは時間的ONチャンネルにしか寄与していないことを示している。

共著者:篠森敬三, Lothar Spillmann, and John S.Werner

13.「色覚における加齢 の影響」

単著

1998年3月

照明学会視覚研究専門部会公開研究会「高齢者のための照明」招待講演

(招待講演)

 本研究会では,高齢者にとって快適な照明環境を実現するための工学的応用をめざして,加齢による視覚変化に関する各種研究をもとに,照明設計の指針を策定することを目標としている。本発表では特に,加齢による水晶体濃度の増加,老人性縮瞳,および錐体細胞の形態変化による感度低下によって生じる網膜照度減少や刺激光の分光分布変化さらに,神経系における伝達効率の変化が,色覚にどのような影響を及ぼすかについて論じた。結論としては,一般的な視環境のもとでは,人間の視覚系は,生涯を通じて相当程度まで色の恒常性を維持する。その一方,色弁別実験の結果は,神経経路においてノイズの増加や感度低下が生じていることが示され,加齢に対する色覚補償が完全ではないことが明らかとなった。したがって,どのように生体内での補償と,照明による補償のバランスを取るかが今後の課題である

14.「定量的モデルによる波長弁別データの解析」

単著

1999年1月

日本視覚学会1999年 冬期研究会

[Vision (Journal of Vision Society of Japan), Vol.11, No.1,P49,1999]

(口頭発表)

人間の色弁別能力を調べる事は応用的にも重要であるし,色覚メカニズムを調べるためにも有用な方法である。簡便に色弁別を調べる方法の一つとして,波長弁別能力が測定されてきた。しかし波長弁別実験では,単一錐体やある特定の色メカニズムの作用によってのみ色が弁別されているということは無く,結果を色覚メカニズムの仮定に基づいたモデルによって分析する必要がある。
  しかし過去の多くのモデルは,被験者間の差を合理的かつ定量的に説明出来ていない。パラメータ値の調整により平均データにはフィットできるが,個々の被験者のデータにフィッティングすることは難しい。そこで,本研究で,Boynton-Kambeモデル*を用いて,波長弁別閾値の結果を被験者ごとに定量的に分析した。モデルによって過去のデータを解析した結果,このモデルにおけるパラメータ値の変化は個人あるいは実験条件による変化について定量的に説明出来るだけでなく,実験条件によるデータの歪みも浮き彫りにした。

15.「色覚メカニズムにおけるS錐体の役割」

単著

1999年1月

東京工業大学像情報研究施設講演会

(招待講演)

著者がいままで研究を行ってきた色覚におけるS錐体の役割に関する研究を,過去にさかのぼって紹介した。

 

16.「医療における情報化技術の利用」

 

単著

1999年2月

日本放射線技術学会四国支部講演会

(招待講演)

 医療の情報化について3つのキーワードを取り上げて論じた。その3つのキーワードとは,デジタル化,システム化,コード(記号)化である。デジタル化のメリットの一つに加工の容易性と再現性があり,この特性を生かすところにデジタル化の意義がある。また「情報の利用スピードの向上」がいわれる。
 コード(記号)化は,情報化を考える上で本質的な問題である。デジタル化による質の低下やコストについては大きな改善が継続的になされている一方で,コード化にまつわる問題は最後までついて回る。結局情報をどのようにコード化しそのコードをどう共有するかということであるので,実際の議論としては,人間ベースで考えてシステムに何をやらせるかという問題に深く関わってくることを説明した。

17.「周辺光による黒み誘導下での色弁別」

共著

2001年1月

日本視覚学会2001年冬季大会

[Vision (The Journal of Vision Society of Japan), Vol.13,No.1, p.61, 2001.]

(口頭発表)

 等輝度刺激における色弁別が,テスト刺激領域を取り囲む高輝度周辺白色光(輝度は約2log高い)を同時提示することによってどの様に変化するかを測定した。黒み誘導においては,被誘導領域の色みが黒み誘導量に寄与することから,等輝度であっても明るさが異なる場合には,黒み誘導による色弁別への影響が異なるという可能性がある。さらに全体の刺激光レベルが周辺刺激光レベルで規定されるので,色恒常性にみられるような視野全体でのレベル順応の効果も想定される。
 等エネルギー白色からの色弁別の実験結果は,周辺光によりほぼ全ての色方向について色弁別閾値上昇が見られ,色弁別への悪影響があることが示された。その一方で特異的な効果を示す色方向は観察されなかった。

共著者:篠森敬三,西村有加

18.「前刺激による色順応後の色弁別」

共著

2001年1月

日本視覚学会2001年冬季大会

[Vision (The Journal of Vision Society of Japan), Vol.13,No.1, p.70, 2001.]

(口頭発表)

 色順応のメカニズムは錐体レベルでの順応と網膜以後のレベルでの反対色的な順応との組み合わせによって説明されることが多い。Krauskopf らは反対色的な順応の説明として cardinal axis を用いている。しかし,このcardinal axis については reddish-greenish,yellowish-bluish axis がそれぞれ単一の2つのメカニズムなのかそれとも色の各方向がそれぞれ独立している4つのメカニズムであるかは定かでない。
 そこで白色と高彩度色の間でフリッカー変化する前順応刺激により色順応した場合に,白色を中心とする色弁別楕円が順応前の比べてどのように変化するかを調べることによって rgyb の各方向についての独立性を検討した。

共著者:深田良尚,篠森敬三

 

19.「異なる空間周波数刺激での輝度インパルス応答」

共著

2001年1月

日本視覚学会2001年冬季大会   

[Vision (The Journal of Vision Society of Japan), Vol.13, No.1,p.76, 2001.]

(口頭発表)

        

 2刺激光法により,輝度インパルス応答関数を測定した。刺激は空間的横グレーティングにGabor関数の包絡線をかけたものを用い,空間周波数の影響を検討した。単純な点光,面光あるいは低空間周波数グレーティングを用いた従来の研究では,輝度インパルス応答関数は,時間とともに興奮相と抑制相が変化する2〜3相性の関数を示している。
 高空間周波数を用いた場合には,P(Parvocellular)経路の特性から考えて,抑制相が弱まり時間的足し会わせ時間が増大することが予測された。しかし,予想に反して,例えば6cpdでの測定では,単純Gabor関数の場合と比べて,逆に興奮相と抑制相の交代がより早い高速な輝度インパルス応答関数が得られた。実験条件制御なども含めてこの点について検討した。

共著者:篠森敬三,平山正治

20.「同化現象における刺激形状変化のおよぼす影響」

共著

2001年1月

日本視覚学会2001年冬季大会

[Vision (The Journal of Vision Society of Japan), Vol.13,No.1, p.78-79, 2001.]

(口頭発表)

均一背景に細い線を描画する場合に同化現象が発生することはよく知られており,Helsonは同化現象から対比に移行するまでの線分の刺激条件について明らかにしている。また,Mackayは均一背景にドットを配置することによって同化現象が生じることを示した。そこで,今発表ではMackayの同化現象図形において,ドットサイズなどの刺激条件を変化させたときの同化現象量を調べた。
  Helsonらの報告(線分の太さが 11.5 min. より太いと対比へ移行)から図形中のドットサイズが小さいときのみ同化現象が生じると予測されたが,本実験においては現在までのところドットサイズ変化(1~54 min.)の同化現象量への影響は微小であり,対比へ移行することはなかったとの結果を得た。さらに,他の形状パラメータの影響についても検討した。

共著者:中山高明,篠森敬三

21.「影の重なりや見え方が影による奥行き知覚に与える効果」

共著

2001年1月

日本視覚学会2001年冬季大会

[Vision (The Journal of Vision Societyof Japan), Vol.13,No.1, p.82, 2001.]

(口頭発表)

刺激となる物体の影の移動,また影と物体との重なり(Occlusion)が在るとき,奥行き知覚が生じることが報告されている。そこで今回の実験は,影が奥行き知覚に与える効果を重なり方や見え方の変化により調査することを目的とした。
 実験方法として位置固定の白い円においてその影とする画像の重なり具合を変化させながら測定し,被験者に感じた浮き量を提示してもらった。また,影には見えない色(今回は赤)でも同様の実験を行った。実験で使用した影の画像は,事前に位置毎に最も影らしく見えるものをぼけ量を変えた数枚の画像から選択してもらい,その結果より作成したものである。
 実験結果より,重なりが存在すると色が赤でも浮きを感じるのに対し,重なりが無いと色が黒の場合は浮きを感じるが赤の場合は影ではなく別の物体と認識されることがわかった。このことは,刺激となる物体との重なりと,どの程度影として判断されているかという2点が,奥行き知覚量に寄与することを示唆している。また,結果は,大きな奥行き知覚量を生じるためにはこの2つが両方必要であることを示した。

共著者:阿河智紀,篠森敬三

22.「異なる判断条件における刺激応答時間」

共著

2001年1月

日本視覚学会2001年冬季大会

[Vision (The Journal of Vision Society of Japan), Vol.13,No.1, p.83, 2001.]

(口頭発表)

 使いやすいインターフェース等への応用的な見地から,あるパターンの比較を画面上下に提示された2つの視覚刺激どうしで行う場合(上下比較)と,記憶したパターンと呈示刺激パターンとの間で行う場合(記憶比較)での,被験者の応答時間(reaction time)の差を測定した。刺激は常に上下2つ呈示され,被験者は判断終了後にボタンを押す。パターンとしては,命名を難しくするためとパターン間の差異を微小にするために白黒の雪の結晶写真を用いた。
  上下比較の上下パターン同じ,上下比較の上下パターン異なる,記憶比較での記憶されているパターン呈示,記憶比較での記憶されていないパターン呈示,の4つのカテゴリーで応答時間を測定した。結果の一例は,上下比較の場合は両ケースの平均で
1.4秒程度であったのに対し,3パターンを記憶させた記憶比較の場合には平均で 3.8秒程度の反応時間となり,最大9秒程度になる場合も見られた。両者の差は統計的に有意である(5%)。予想通り記憶依存のパターン比較をした場合に,応答時間が長くなることが示された。今後はさらに記憶させる枚数や画像の記憶の仕方などの影響や被験者間の差についても検討する必要があると思われる。

共著者:東野泰幸,篠森敬三

 

 

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