\documentclass[a4j]{jarticle} \usepackage{kut-short-rep} \usepackage[dvipdfm]{graphicx} % dvipdfmオプションはJPEGやPNG画像を挿入するのに必要. % (WS室環境では)dvipdfmxを使う場合もdvipdfmと書く. % (TeX Live 2013以降の環境ではdvipdfmxと指定しなければいけない). \title{ディジタル画像のモノクローム化 {\mdseries\normalsize (full v.)}} \subjecttitle{情報学群実験第2} \idnumber{1170999} \author{高田喜朗} \date{2014年3月1日} \begin{document} \maketitle % TeX用語 % article = 数十ページ程度以下の小規模文書.雑誌(論文誌)に掲載される論 % 文もこれに当たる. % report = articleとbookの中間.実験レポート等よりは,官庁や企業の公式 % 報告書のような,かなり分量のあるものに当たる. % book = 1冊の書籍. % % chapter = 章 % section = 節 % subsection = 小節 % 書籍を想像すればわかるが,章(chapter)は数ページから十数ページ程度の % 大きさのまとまりを指す.従って,articleは全体が1章程度の分量であり, % その中を分割したものは節(section)となる. %%% 導入 (introduction) \section{はじめに} % 最初の節の見出しは,和文では「はじめに」「まえがき」「序論」「緒言」 % などが使われる.英文では Introduction とすることが多い. % 初めてその研究の話を聞く読者に,その研究を紹介(introduce)するための節. % 基本的には以下のような内容を書く. % - そのテーマの背景や重要性, % - 研究の目的(明らかにしたい事柄,検証したい仮説), % - 研究の方針や概要(研究内容は以降の節で詳しく述べるが,ここで全体像 % をかいつまんで述べる) % 論文全体の印象を決める(露骨に言えば,読むに値する論文かどうか読者が % 判断する)重要な節であり,上手に書くのが難しい節でもある.ほかの節を % 先に片付けてから前書きを書く,という流儀もある. % 実験レポートの場合は,前書きを書かせることで,その実験テーマの背景や % 重要性をどれだけ理解しているか(あるいはどれだけ調査しているか)を測 % る意味がある(卒業研究等でもそういう場合があるかも知れない). % % これ以降の節では実験室内で実際に行った事柄を中心に書くのに対し,この % 節は実験室の外で調査し勉強した内容を中心に書くことになる.言い換えれ % ば,「実際に行うこと」だけが実験ではなく,その背景の調査まで含めて実 % 験である(実際の研究でも,実際に行ったことだけではなく,研究の重要性 % を説明できるよう文献を調査して裏付けを集めることまで含めて研究である). % 以下の例では若干しつこく文献を参照(\cite)しているが,実験レポートにお % いて文献を参照することは「自分の思い込みで書いているのではなく,ちゃ % んと調査している」ことを主張することになる.もちろん,文献にそのこと % が書かれているか確認せずに参照するのは,一種の嘘を書いていることにな % るので,行ってはいけない. 本実験課題では,ディジタル画像のモノクローム化を扱う. モノクローム化とは,入力画像の各画素を,同じ輝度の 無彩色に置き換えて出力することである. 色は通常,3次元空間(例えばRGB色立体,CMY色立体, HLS色立体など\cite[pp.42--43]{Iso96})内の1点として 表されるが,モノクローム化により1次元の輝度値に変換されることになる. モノクローム化は,例えば以下のような場面で用いられる. \begingroup % \leftmarginiの変更を局所的にする({}で囲むのと同じ) \setlength{\leftmargini}{0pt} % itemize環境内を字下げしない \begin{itemize} \setlength{\itemindent}{3zw} % 各itemの1行目の開始位置 \setlength{\itemsep}{0pt} % item間の間隔を少し詰める \item モノクローム画像しか表示あるいは印刷できない 装置でカラー画像を扱いたい場合\cite{Ado01}. \item 階調画像(各画素が1次元の値を持つ画像)を前提とした画像処理や 画像解析を行う際の前処理. モノクローム化を前処理とする画像処理には, 例えば微分フィルタによる輪郭抽出\cite[2.2節]{MN89}や, モノクローム化後さらに2値画像に変換した上での 形状解析\cite[4.3節]{AN91}などがある. \item NTSC方式\cite{Int11}などのカラーテレビジョン方式において, R, G, B情報を輝度と色の情報に変換する場合. これは,白黒テレビジョン方式との互換性のために行われる.また, 色よりも輝度に多くの伝送容量を割り当てることで, 限られた伝送容量の下で品質のよい動画像を伝送する目的もある \cite[p.46]{Iso96}\cite[pp.184--188]{AN91}. \end{itemize} \endgroup % このレポートの主題であるモノクローム化について,大まかな説明と,そ % の意義や重要性を述べる段落.重要性を強調し過ぎて大げさになってもよ % くないので,ここでは「多くの場面で必要となる」という説明のみにして % いる.なお,単に「多くの場面で必要となる」とだけ書くよりは,上記の % ように具体例を挙げた方が,説得力が増す. % % pp. = pages (複数形), p. = page (単数形). % TeXの通常モードでは,- はハイフン,-- は2分ダッシュ,--- は全角ダッシュ % を表す. % ページ範囲には2分ダッシュが好ましい. 本実験課題では,入力画像の画素の色がR, G, B情報で表される場合における モノクローム化を扱う. R, G, B情報から輝度を得る方法として,上述のNTSC方式で定義されている 以下の計算式がよく知られている\cite{Int11,Ado01}. この計算式は,単色光に対する人間の比視感度を考慮して設計されている \cite[p.46]{Iso96}. \begin{equation} Y = 0.299\,R+0.587\,G+0.114\,B. \label{eq:ntsc} \end{equation} ただし,$R$, $G$, $B$は入力画像の画素のR, G, B成分値,$Y$は輝度を表す. % モノクローム化の中身の説明. 本実験課題の目的は,モノクローム化を行うプログラムを作成し, 上記の計算式によって実際にモノクローム化が行えることを確認することである. 作成したプログラムにサンプル画像を入力し,出力画像を観察する. また,その際の実行時間を測定する. 加えて,輝度をR, G, B成分値の平均とする単純な方法(つまり$Y=(R+G+B)/3$)に ついてもプログラムを作成し,どちらが自然な出力画像を得られるか, 及び実行時間に差があるか,比較する. なお,計算式(\ref{eq:ntsc})を用いる方法を以下ではNTSC法と呼び, R, G, B成分値の平均を用いる方法を単純平均法と呼ぶ. % 実験の目的.どんな仮説を検証するのか,そのために何を行うのか,を述 % べる.ここでの仮説は,まとめると以下の4点と言える. % 「計算式(1)によって実際にモノクローム化が行える」 % 「そのようなプログラムは実現可能,かつ現実的な実行時間で実行可能」 % 「単純平均法よりもNTSC法の方が自然な出力画像を得られる」 % 「単純平均法とNTSC法の計算時間の差は小さい」 % % 実験で確かめられないことを仮説にするのは意味がないので,どういう実 % 験を行うか,実験によってその仮説を検証することが可能かを考えて,実 % 験の目的を決める必要がある.また,実験の目的と実験内容や考察が合致 % しているか,提出前に確かめることも大事である.実験内容や考察に合わ % せて実験の目的を書き直す場合もある(実はこの例もそう). %%% 外部仕様・内部仕様 % 以下の2つの節(外部仕様・内部仕様)で,作成したプログラムについて説 % 明する. % ソースコードも付録として添付するのだが,それを読まなくても,どんなも % のを作ったのか読者にわかるように(読者の目に浮かぶように)説明する. % % いわゆるdesign choice(考えられる選択肢の中から何を選択したか)につい % て,どうしてそれを選択したか説明するとなおよい. \section{プログラムの外部仕様} % プログラムの利用者から見た仕様.入出力の仕様や操作方法などを書く. % % 「Javaで記述」や「ImageIOクラスを使用」などは本来は内部仕様だが,外部 % 仕様に影響している(実行するときに java ... と入力すると % か,ImageIO.readが対応する画像ファイル形式を入力できるとか)ので,こ % の節に書いた. プログラムはJavaで記述し, シェル上で実行するコマンドラインアプリケーションとして作成する. 主クラス名は\texttt{ImageMonochromatizer}とする. プログラムを実行する際は,シェル上で以下のように入力する. \begin{quote} \texttt{\$ java ImageMonochromatizer }\textit{fin}\texttt{ }\textit{fout} \end{quote} ただし,\textit{fin}, \textit{fout}はそれぞれ 入力ファイル名及び出力ファイル名である. 上記を実行すると, 入力ファイル\textit{fin}から画像を読み込んで, モノクローム化された画像を出力ファイル\textit{fout}に書き出す. 画像ファイルの読み込み及び書き出しにはJava Image I/O API\cite{Ora12}の \texttt{ImageIO}クラスを使用する. Portable Network Graphics (PNG)\cite{W03}や JPEG\cite{Int92}など \texttt{ImageIO\allowbreak.read}メソッドが対応する画像ファイル形式であれば 入力ファイルとして使用できる. 出力画像ファイル形式はPNGとする.プログラムを単純にするため, 出力ファイル名の拡張子に応じて画像ファイル形式を選択するといった処理は行わない. 同じくプログラムを単純にするため, 上で述べたことを満たさない入力に対する動作は規定しないこととし, エラー処理は特に行わない. \section{プログラムの内部仕様} % アルゴリズム,使用するデータ構造,プログラムの内部構造(モジュール構 % 成),各モジュールの仕様などを書く. % % 実験の目的に照らして,どこが重要か考えて,書くべき内容を選ぶのがよい. % この例の場合は,以下の2点がまず重要と考えた. % - モノクローム化をどういうアルゴリズムで実現するのか. % - そのアルゴリズムを実現するにはどのようなデータ構造が前提となるか. % また,設計や実装における工夫もアピールすべきと考えて,以下も記述した. % - 必要な処理をどのようにクラスやメソッドに振り分けたか. % - その他,実装上の工夫(javadocコメント). プログラムの主要部分は次のようになる. 入力画像の各座標$(x,y)$について下記を行う. \begin{enumerate} \setlength{\itemsep}{0pt} \item 座標$(x,y)$の画素の色情報$(A,R,G,B)$を読み出す. ただし,$A$, $R$, $G$, $B$はそれぞれ,不透明度, 赤の強さ,緑の強さ,青の強さである. \item 式(\ref{eq:ntsc})に従って,$R$, $G$, $B$から輝度$Y$を計算する. \item 出力画像の座標$(x,y)$の画素の色を$(A,Y,Y,Y)$にする. これにより,この画素は輝度$Y$の無彩色となる. \end{enumerate} 入力画像及び出力画像は, \texttt{java.awt.image}パッケージの \texttt{BufferedImage}オブジェクトで表す. 座標$(x,y)$の画素の色情報は \texttt{getRGB\allowbreak($x$,\,$y$)}で得られる. 画素の色の設定は\texttt{setRGB($x$,\,$y$,\,$\mathit{rgb}$)}で行う. \texttt{getRGB}の戻り値及び\texttt{setRGB}の引数$\mathit{rgb}$は, $A$, $R$, $G$, $B$の4成分(各8ビット)を結合した,32ビットの整数値である. \begin{figure} \centering \includegraphics[width=\columnwidth]{image/classes.png} \caption{クラス図} \label{fig:classes} \end{figure} % figure環境の[h]オプション(「その場所に挿入」)は,十分注意して使う % か,あるいはなるべく使わない方がよい.本文の途中に図が差し込まれる % と,読者にとってはしばしば妨害に感じられる. % % \usepackage[dvipdfm]{graphicx} と書いておくと,EPSF以外の画像も % \includegraphicsで挿入できる.PNG, JPEG, PDFが扱える.ただし, % platexを実行する前にebbコマンドで .bb ファイル (BoundingBox情報) % を生成しておく必要がある. % $ ebb hogehoge.png % また,dvipdfm または dvipdfmx でないと処理できなくなる(dvipsを使う % とエラーになる). % (OS X Lion上のdvipdfmxでPNGまたはJPEGを挿入しようとすると,Abort % trap: 6という実行時エラーで異常終了することがある.根本的解決はTeX % Live版dvipdfmxに置き換えることだが,できない場合は,画像をPDFに変換 % してから挿入するなどして回避する.) % (\usepackage{graphicx}のオプションにdvipdfmxを指定した場合は,ebb % コマンドの代わりにextractbbまたはxbbコマンドを使って,.bbファイルで % はなく .xbbファイルを作る必要がある.詳しくは man extractbb を参 % 照.) プログラムの内部は, 将来の拡張性を考慮して, 単一のクラスではなく,継承関係にある3つのクラスで構成する. クラス構成を表すUMLクラス図\cite{Al03}を図\ref{fig:classes}に示す. 以下,各クラスについて説明する. \begingroup % \leftmarginiの変更を局所的にする({}で囲むのと同じ) \setlength{\leftmargini}{0pt} % itemize環境内を字下げしない \begin{itemize} \setlength{\itemindent}{3zw} % 各itemの1行目の開始位置 \setlength{\itemsep}{0pt} % item間の間隔を少し詰める \item \texttt{ImageProcessor} --- 各種の画像処理を表す抽象クラス. 具体的な処理手順は,サブクラスの中で, 抽象メソッド\texttt{apply}の実装として記述する. また,各種の画像処理で共通して用いられる以下の機能を提供する. \begin{itemize} \item \texttt{applyToFile} --- \texttt{apply}をファイルに適用する. \item \texttt{composeARGB} --- A, R, G, Bの各成分値を結合した整数を返す. \item \texttt{decomposeARGB} --- 整数値をA, R, G, Bの各成分値に分解する. \end{itemize} \item \texttt{ImageColorModifier} --- 各画素の色を他の画素とは無関係に変更する処理を表す抽象クラス. モノクローム化に限らず,例えば 濃度変換\cite[pp.47--48]{AN91}などもこのような処理に当たる. このクラスのメソッド\texttt{apply}は, 上述のアルゴリズムに従って,出力画像の各画素の色を設定していく. ただし,入力画像の画素の色から 出力画像の色を計算する部分は,抽象メソッド\texttt{modifyColor}を呼び出すことで行う. \item \texttt{ImageMonochromatizer} --- 入力された色情報$(A,R,G,B)$から輝度$Y$を計算し,色$(A,Y,Y,Y)$を返すよう, \texttt{modifyColor}を実装したクラス. \end{itemize} \endgroup プログラムのソースコードを付録として添付する. なお,各クラス及びメソッドにはドキュメンテーションコメント\cite{AGH06}を記述し, Javadocツールを使ってAPI仕様文書を生成できるようにした. %%% 実験 \section{実験} % 作成したプログラムを使って行った実験について書く節. % 実験内容は慎重に決めるべきであり,実は,「実験結果及び考察をどのよう % に書くか」を考えてから実験内容を決める方がむしろ望ましい.つまり,読 % 者が読む順番は 実験内容 → 実験結果 → 考察 だが,書き手が中身を考え % る順序はその逆である. % - 考察 = 実験の目的として挙げた各仮説が成り立つと言えるかどうかを述べ % る節.はっきりと考察を述べるためには十分な材料(実験結果)が必要. % 例えば「一例しか試していないのに『AよりBの方がよい』とは言えない」 % 「条件が対等でない実験結果から『AよりBの方がよい』とは言えない」とい % うこと. % 実験結果・考察をどう書くか考えずに実験を行ってしまうと,レポートを書 % くときに非常に苦労することになる. % この例では,検証したい仮説は以下の4つであった. % 1.「計算式(1)によって実際にモノクローム化が行える」 % 2.「そのようなプログラムは実現可能,かつ現実的な実行時間で実行可能」 % 3.「単純平均法よりもNTSC法の方が自然な出力画像を得られる」 % 4.「単純平均法とNTSC法の計算時間の差は小さい」 % % 仮説2のためにはなるべく多くの入力画像を用意した方がよいが,労力も考え % て,ここでは低解像度画像と高解像度画像の2種類を試すことにした.あまり % 十分とは言えないが,低解像度画像だけよりは説得力が増すだろう. % % 仮説3については,「自然な出力画像」を測る尺度が思いつかないので,とり % あえず出力画像を目で見て比較する,ということにする.どちらが自然に見 % えるか,多くの人にアンケートを取ることも考えられるが,労力が大きすぎ % る(仮説3が実験の主目的ではないので).なお,1種類の画像だけではなく % 複数通り試した方が,少しは説得力が増す. % % 仮説4については,統計的検定(分散分析)を行えるよう,ある程度の回数繰 % り返して実行時間を測定する. % % なお,もし検証したい仮説が「モノクローム化において,入力画素数と実行 % 時間は比例関係にある」であれば,大小さまざまな画素数の入力画像を用意 % して,それぞれ実行時間を測定し,入力画素数と実行時間の関係のグラフを % 描いて示す必要があるだろう.そのような調査も興味深いが,実験に使える % 時間は無限ではないので,期限までに実験を実施できて実験レポートを仕上 % げられるか考えながら「実験の目的」を設定する必要がある.実験課題で最 % 小限要求されていることは何か,それ以外に自分が調査したいことは何か, % といった優先度を考えて取捨選択するとよいだろう. \subsection{実験方法} % 実験方法について,読者が同じことを再現できる程度に詳細に書く.読者が % この節を読みながら実際に追実験する様子を想像してみるとよい.同じ実験 % が可能か? 途中で行き詰まらないか? % 特に,実験結果に影響することはできるだけもれなく書く.例えば実行時間 % を述べるなら,コンピュータのCPU,クロック周波数,RAM容量,OS,コンパ % イラ,入力データサイズ,などが影響すると考えられる. 入力画像を作成したプログラムに入力し, 出力された画像を観察した. また,実行に掛かった時間を測定した. 入力画像として,画像A, B, Cの3つ(図\ref{fig:images})を使用した. 入力画像の諸元を表\ref{tab:inputs}に示す. \begin{table} \centering \caption{入力画像の諸元} \label{tab:inputs} \begin{tabular}{lccc} & {\small 形式} & {\small 幅・高さ (画素)} & {\small ファイルサイズ} \\ \hline 画像A & JPEG & $320\times240$ & 約39KB \\ 画像B & JPEG & $320\times240$ & 約80KB \\ 画像C & JPEG & $1600\times1200$ & 約559KB \\ \end{tabular} \end{table} 前節で述べたNTSC法のプログラム(P1とする)と, 輝度$Y$の計算式を$Y=(R+G+B)/3$に書き換えた単純平均法のプログラム (P2)の2つを使用する. 3つの入力画像と2つのプログラムのすべての組み合わせについて, それぞれ6回続けて実行し,ディスクキャッシュの影響を避けるため, 2回目以降の5回の実行時間を測定した. 実行時間の測定にはtimeコマンドを使用した. 実験にはiMac (3.2GHz Intel Core i3, 4GB RAM, Mac OS X 10.6.8)を使用した. また,コンパイル環境及びJava実行環境として, Java SE Development Kit 7, Update 15を使用した. % 上記はWS室のiMacとは異なる(もっと古い)ので注意. % CPU, RAM, OSについてはappleメニューの「このMacについて」で調べられ % る.JDKのバージョンは,javac -version で調べられる. \subsection{実験結果} % 観測事実を述べる節. % 図表で結果を示すのはたいへん有益である.一方,図表だけで示すのではな % く,要約を本文にも書いた方が親切(下記の例で,実行時間は表に書かれて % いるが,本文にも要約を書いている). 得られた出力画像を図\ref{fig:images}に示す. また,プログラムと入力画像の各組み合わせにおける平均実行時間を表\ref{tab:time}に示す. 表\ref{tab:time}の通り, P1, P2とも,画像A, Bに対する実行時間は約1.90秒,画像Cに対する実行時間は約1.95秒 であった. 同じ入力画像に対するP1とP2の平均実行時間の差は0.01秒未満だった. 実行時間に関して,プログラム及び入力画像を因子とする 分散分析\cite{Ta77}を行ったところ,P1, P2の実行時間の間に有意差は見られなかった ($p=0.11$). \begin{figure*} \centering \begin{tabular}{cccc} & 画像A & 画像B & 画像C \\ \raisebox{0.188\columnwidth}{入力} & \includegraphics[width=.5\columnwidth]{image/i1.jpg} & \includegraphics[width=.5\columnwidth]{image/i2.jpg} & \includegraphics[width=.5\columnwidth]{image/i3.jpg} \\ \raisebox{0.188\columnwidth}{P1出力} & \includegraphics[width=.5\columnwidth]{image/o11.png} & \includegraphics[width=.5\columnwidth]{image/o12.png} & \includegraphics[width=.5\columnwidth]{image/o13.png} \\ \raisebox{0.188\columnwidth}{P2出力} & \includegraphics[width=.5\columnwidth]{image/o21.png} & \includegraphics[width=.5\columnwidth]{image/o22.png} & \includegraphics[width=.5\columnwidth]{image/o23.png} \\ \end{tabular} \caption{入力画像及び出力画像} \label{fig:images} \end{figure*} \begin{table} \centering \caption{平均実行時間} \label{tab:time} \begin{tabular}{lccc} & 画像A & 画像B & 画像C \\ \hline P1 {\small (NTSC)} & 1.900s & 1.899s & 1.950s \\ P2 {\small (単純平均)} & 1.906s & 1.903s & 1.951s \\ \end{tabular} \end{table} % 生データ % P1 A: 1.900s 1.895s 1.894s 1.910s 1.901s % P1 B: 1.903s 1.902s 1.892s 1.895s 1.905s % P1 C: 1.956s 1.956s 1.950s 1.948s 1.938s % P2 A: 1.906s 1.916s 1.910s 1.900s 1.899s % P2 B: 1.908s 1.901s 1.904s 1.898s 1.904s % P2 C: 1.948s 1.953s 1.954s 1.944s 1.954s %%% 考察 \section{考察} % 実験の目的として設定した仮説が成り立つと言えるか,実験結果を基に議論する. 図\ref{fig:images}より,計算式(\ref{eq:ntsc})を使って モノクローム化を実現できることが確認できた. また,計算式(\ref{eq:ntsc})の代わりにR, G, B成分値の平均を用いた 方法でもモノクローム化が行えることがわかった. 平均実行時間はいずれも2秒未満であり, 特に約200万画素の画像Cに対しても,画像A, Bに比べて約50ミリ秒しか増加しなかった. また,NTSC法と単純平均法の実行時間には有意な差は見られなかった. これらのことから,NTSC法及び単純平均法によるモノクローム化は, 大きな画像に対しても現実的な時間で実行できると 予想される. ただし,本実験では静止画像しか扱っておらず,動画像に対して現実的な時間で 実行できるかどうかは不明である. % 一つの研究ですべてが明らかになるはずはなく,むしろ「何が明らかにな % り,何はまだ不明なのか」をよく考えることが大事である.実験レポート % の場合,「何はまだ不明か」を書くことは,「その実験でわかること・わ % からないことをよく理解している」という主張になる. NTSC法(P1)と単純平均法(P2)の出力画像を比較すると,画像A及び画像Cでは あまり大きな差は見られなかった.画像Bでは,P1の出力の方が, 入力画像の黄色とオレンジ色の差がはっきり再現され,入力画像の印象により近い と思われる出力画像が得られた. % 主観的評価なので「思われる」と書いたが,単なる個人的意見ではなく, % 「多くの人が同意するだろう」と思って書いている.単なる個人的意見や % 感想は,実験レポートや研究論文には書くべきでない(読者は個人的意見 % ではなく事実を知りたいのだから). このことから,少なくとも本実験の範囲では, NTSC法は単純平均法より自然な出力画像が得られるが, 黄色やオレンジ色の物が写っていない画像では差はほとんどないことがわかった. なお,両手法のうちどちらの出力画像が自然であるかは, 被験者による評価実験を行うことなどによって 測定できると考えられる. %%% まとめ \section{まとめ} % 文書の締めくくりとして,この実験で何がわかったかを改めて述べる. % 研究論文では,残された課題や今後の展望についても述べることが多い. % % 実験レポートでは,「まとめ」の節を置かず,「考察」をまとめに代える流 % 儀もある. 本実験課題では,ディジタル画像のモノクローム化を行うプログラムを作成し, 実際にモノクローム化が可能であるかどうか確かめた. 3つの画像にモノクローム化を適用し, 約200万画素の画像でも2秒未満で実行できることを確認した. また,NTSC法と単純平均法を比較し, 実行時間にはほとんど差がないこと, また入力画像によってはNTSC法の方が自然な出力を得られるが, 黄色やオレンジ色の物が写っていない画像ではほとんど差がないことがわかった. \section*{謝辞} 本実験課題は本学情報学群 1170998 高知太郎氏と共同で実施した. また本学情報学群の鏡野花子さんには,クラス設計に関して有益な助言をいただいた. これらの方々に深く感謝いたします. %%% 参考文献 % 本文で引用(\cite)したもののみを記載すること. % % 参考文献リストの書式(スタイル)は,通常は掲載誌ごとに決まっている. % ここでは『電子情報通信学会和文論文誌 投稿のしおり(情報・システムソサ % イエティ)』の2.6節「文献」に概ね従っている. % http://www.ieice.org/jpn/shiori/iss_2.html#2.6 % スタイルは掲載誌ごとに変わるが,必要な項目はだいたい同じである % (「読者がその文献を入手するための情報を提供する」という目的は同じな % ので).(BibTeXを使えば,書式を整えるのは機械がやってくれる.) % % なお,上記のしおりには,文献を並べる順序の指定がないが,通常は以下の % 2つのうちどちらかに従う. % (1) 第一著者の姓(名ではないので注意)のアルファベット順. % (2) 本文での引用順. % ここでは(1)を採った. \begin{thebibliography}{19} \bibitem{Ado01} Adobe Systems, PostScript$^{\mbox{\scriptsize\textregistered}}$% リファレンスマニュアル, 第3版, 第7章: レンダリング, アスキー, 2001. % 第何版であるか(英語だとedition)はとても重要. % ページ番号で範囲を指定する代わりに章番号と章名で指定している. % 発行所名は正しくは株式会社アスキーだが,「株式会社」等は省略するのが慣わし. % 必ず巻末の奥付を見て,著者,書名,発行所,発行年を確認すること. % 版も刷も複数ある場合,その版の第1刷の発行年を文献リストに記載する. \bibitem{AN91}% Agui & Nakajima 安居院猛, 中嶋正之, 画像情報処理, 基礎情報工学シリーズ, 18, 森北出版, 1991. \bibitem{Al03} S.S. Alhir, 入門UML, 原隆文(訳), 3章: クラス図とオブジェクト図, オライリー・ジャパン, 2003. \bibitem{AGH06} K. Arnold, J. Gosling, and D. Holmes, The Java Programming Language, Fourth Edition, Chapter 19: Documentation Comments, Addison-Wesley, 2006. \bibitem{Int92} International Telecommunication Union, ``Information technology --- Digital compression and coding of continuous-tone still images --- Requirements and guidelines,'' Recommendation T.81 (Also published as ISO/IEC 10918-1),\hfill % http://www.itu.int/rec/T-REC-T.81-199209-I/en, http://\\www.w3.org/Graphics/JPEG/itu-t81.pdf, 1992. \bibitem{Int11} International Telecommunication Union, ``Studio encoding parameters of digital television for standard 4:3 and wide-screen 16:9 aspect ratios,'' Recommendation ITU-R BT.601-7,\\ http://www.itu.int/rec/R-REC-BT.601/en,\\ 2011. % TeXでは,二重引用符は `` '' と入力することで表す. % % URLのように途中で改行できない文字列があると,Underfullを起こしやすい. % \\ を挿入して左揃えで改行してやると,Underfullを解消できることが多い. % (試しに上記の \\ を削除して組版してみなさい.badnessが5000を超える場合はかなり % 不格好になっているので修正すべき.badnessが1000程度でも,修正した方がより綺麗な % 仕上がりになる.) % この辺の見た目の調節は,最後の仕上げの段階で,組版結果を目で確認しながら行うとよい. \bibitem{Iso96} 磯博, ディジタル画像処理入門: コンピュータによる画像処理の基礎知識, 産能大学出版部, 1996. \bibitem{MN89} 南敏, 中村納, 画像工学: 画像のエレクトロニクス, テレビジョン学会教科書シリーズ, 1, テレビジョン学会(編), コロナ社, 1989. \bibitem{Ora12} Oracle Corporation, ``Java SE 7 Image I/O 関連API \& 開発者ガイド,''\\ http://docs.oracle.com/javase/jp/7/technotes/\\ guides/imageio/index.html, 2012. \bibitem{Ta77} 高松俊朗, 数理統計学入門, pp.149--154, 学術図書出版社, 1977. \bibitem{W03} W3C, ``Portable Network Graphics (PNG) Specification (Second Edition),''\\ http://www.w3.org/TR/PNG/, 2003. \end{thebibliography} \end{document}